散文4.赤いツリー
普段は使わないJRの改札横をふと見ると、ひざ丈くらいの赤く染まったツリーがあった。
電飾や、よくツリーにまかれているフワフワしたあれは同じように巻かれていて、ふと不思議に思った。クリスマスっぽさがあまり感じられないのはなぜだ。
クリスマスカラーとは、よく言うが、あれは赤色が世の中街の中にあふれていれば良いわけではない。
緑や白で構成された世界の中で、赤色が際立つから「ああ、クリスマスなんだ。」と初めて思えるのである。
そうして、近年はふつうのツリーって減ったよな、と思い始めた。
シンプルな深緑色の葉がこれでもかと横長に自己主張をして、絡めとったかのような白や金色のフワフワしたやつ。かけてあるのは、くつしたに、クマのぬいぐるみに、よくわからない丸い球……もちろん、頂点にはいっとう光る一番星が欠かせない。
そんなツリーがシンプルであり、クリスマスを最も色濃く象徴すると思う。
あとは、ホットワイン。毎年のミュンヘン市に行って、ホットワインを飲むたびに今年の終わりをピリっと感じるのだ。
あのツリーもホットワインを吸い上げていたとしたら、さぞ気持ちよいだろう。そもそも、その場合は公共交通機関のある、こんな場所にいてもらっちゃ困るけども。
冬がやってくるイメージが膨らんだところで、電車が来る旨のアナウンスが聞こえた。
良く冷えたホームに、三両編成で短めの電車が来る。暖をとりたくて、ちょっと急ぎ気味で乗った。